当院におけるワクチン接種時副反応に対する取りくみについて
犬においてワクチン接種後に全身性または局所性の有害事象が発生することがある。
今回はその中でも迅速に治療が必要となるワクチン接種後アレルギー反応について概説する。
1)ワクチン接種後アレルギー反応
ワクチン接種後に発生する1型過敏症反応のことをいう。
2)症状
全身性アナフィラキシーとして虚脱・頻脈・血圧低下・チアノーゼ・呼吸速泊・呼吸困難などの循環器・呼吸器症状の他、全身性アナフィラキシーの一部または局所症状として顔面腫脹・浮腫・掻痒・蕁麻疹・紅斑などの皮膚症状、嘔吐・下痢などの消化器症状が発現する。
3)症状発現までの時間
全身性アナフィラキシーである循環器・呼吸器症状は接種後数分〜60分以内であり特に5分以内の発生が多い。
皮膚症状や消化器症状などは接種後数分〜24時間に発現する。
多くは12時間以内に発生する。
4)診断方法
ワクチン接種、臨床徴候および接種後症状発現までの時間にて臨床的に診断する
5)治療
症状に応じて緊急時対応も含めた治療を行う。
全身性アナフィラキシーが発生した場合、治療が遅れると致死的になる可能性が高いため、即座に治療を開始する。
生命に関わる全身性アナフィラキシーの場合、循環器・呼吸症状から先駆するとは限らず、消化器症状・皮膚症状などの局所症状が先駆し後に全身症状に移行する場合もある。
そのため、接種後60分以内に何らかの徴候が発生した場合には、血圧測定や聴診等にて循環器系および呼吸器系の状態を把握すべきである。
6)当院でのワクチン接種後副反応への対応体制
前述のごとく、生命に関わるアレルギー反応はアナフィラキシーであり、60分以内に症状が発現する。
逆にいうとこの時間の観察を充分に行い治療のタイミングを逃さないことが必要となる。
この時間から遅れて起こるアレルギー症状は生命に関わることはほぼ無いと言えるため、この時間内の観察を充分に行うことで生命は守られるといえる。
当院では、ワクチン接種はできるだけ午前の早い時間(10時台)に行い、接種後15分はタイマーを設置して1階処置室にて様子観察を行っている。
15分経過後、問題なければ病院2階のスペースにて平常よりは安静目でお預かりして様子観察を行っている。
お迎え時間にもよるが基本は17時まで病院2階にて様子観察を行い、倦怠感も含めた症状が出現時には即座に治療を行える環境を整えている。
門真→本店の送迎が17時頃であるため、接種後約7時間までは病院にて、本店に送迎後は本店スタッフがお迎えまで様子観察を行っている。
また、21時まで本店は営業しているためワクチン接種後の体調変化が21時までにあった場合は、帰宅後であっても、症状を電話などで問い合わせてもらうことで、どのような処置が必要かの判断をご家族に伝え指示することが可能である。
7)ワクチン接種後副反応の既往のある患犬への次年度からの対応
過去にワクチン接種後アレルギー反応の既往がある場合は、その重症度を聴取する。
副反応の強さとワクチンによる有益性の比較を行い、有益性が勝ると診断した場合は、あらかじめ抗アレルギー剤に投与という処置を行った上でワクチン接種を実施している。
いぬの病院バウバウ
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