活動報告
2021.09.16
愛犬にとっての病院は怖い場所?楽しい場所?
〇わんちゃんの幸せには何が必要だと思いますか?
飼い主様と十分にコミュニケーションが取れている、良質でおいしいごはんを食べられる、適度な運動ができているなどいろいろありますが、第一に健康でないとイキイキとした楽しい毎日を過ごすことはできないと思います。バウバウ幼稚園ではわんちゃんの健康を第一に考えており、お預かり中も常に体を触ったり、活気に異常はないかなどのチェックをしています。
今まで以上に密接に病院と連携してわんちゃんの健康を維持するために2019年11月よりバウバウグループの病院、『いぬの病院バウバウ』をオープン致しました。
お家や幼稚園でお預かり中に体調不良があった場合にもすぐに対応できるようになりました。
バウバウ病院の二階には広々としたお預かりスペースがあり、健康診断やワクチン接種を控えているわんちゃんはのびのび過ごしながら順番を待つことができます。
バウバウ病院にはトレーナースタッフも常駐しており、他のわんちゃんの診察中も目を離さずにお預かりが可能です。
毎日幼稚園から何頭かバウバウ病院の二階スペースに遊びに来ており、バウバウ病院が大好きな子もたくさんいます。
今回はその中の一人である虎次郎くんについてのお話です。
虎次郎くんは現在2歳2ヶ月で、人もわんちゃんもおもちゃも大好きで元気いっぱいな柴犬の男の子です。
いぬの病院バウバウでバースデー検診を受ける虎次郎くんの診察に立ち合いました。
バースデー検診とはバウバウ病院で行っている検診キャンペーンの一つです。
異常がないか調べるのと同時に、1歳のお誕生日を迎えある程度成長が止まった頃に検査をして数字や画像などのデータとして残しておきます。
そうすることで今後の診察の基準となります。バースデー検診には血液検査、尿検査、糞便検査、口腔内チェックのセットのほかにオプションでレントゲン撮影やエコー検査も行うことができます。
今回、虎次郎くんは血液検査などの基本的な検査に加え、オプションのレントゲン撮影とエコー検査も行いました。
〇虎次郎の診察中の様子
虎次郎くんは2階のお預かりスペースや2階に上がるまでの道はルンルンと歩いてくれますが、診察室の扉からは踏ん張りました。虎次郎くんは何度か診察を受けたことがあり、診察室での嫌な印象が残っているからです。
診察台に乗る時は抱っこで乗せます。いつもはスムーズに抱っこをさせてくれますが身を引き抵抗しました。
診察台に乗せられると何度も飛び降りようとしました。
保定(保定:獣医さんが診察をしやすいように看護師さんがわんちゃんの体を固定すること)をされ、動けなくなると今から何をされるのかと大きく目を開けてキョロキョロしていました。
不安そうな虎次郎くんに少しでも安心して欲しいと思い、私たちは何をしてあげられるか、
診察時の状況も踏まえて更に細かく虎次郎くんの気持ちを考えてみます。
〇虎次郎の側から見た病院での診察とは
いつも遊んでいる場所とは違う部屋、紫色の服を着た獣医さん・・・普段は会わない獣医さんに身体を触られたりぎゅっと体を保定されたり、更に注射をされたり…人間に置き換えてみても、とっても嫌なことばかりを診察では行います。
柴犬は、たくさん触られるのがあまり好きではなく、神経質な性格の子が多い犬種です。虎次郎くんも保定されることや診察は苦手だと思います。
血液検査では身体を保定され、敏感な脚にチクッと注射をされます。
虎次郎くんは消毒の冷たい感覚にも声を上げて驚いていました。
何度か診察を受けているので診察室という環境に苦手意識がついてきて、更にたくさんの人に囲まれ、身体も固定され、普段は驚かないような刺激でもその時の虎次郎くんの状態では驚いてしまいまったのだと思います。採血している最中の数秒の間、ドキドキしながらもよく頑張ってくれました。
エコーでは暗い部屋で診察台の上に両手両足を伸びた状態で固定され仰向けにされます。
わんちゃんの急所はいくつかありますが、お腹もそのうちのひとつなのでわんちゃんはお腹を出すことに抵抗があります。
仰向けになりしばらくするとこわばっていた身体の力が抜けてきました。どうしても抵抗ができずに諦めたのだと思います。
診察の意味が分からないわんちゃんにとって、無理やり仰向けにされるのは「殺される!」と思うくらい怖かっただろうと思います。
〇獣医の側からみた病院を苦手に思う犬の注意点
一方診察する側の病院スタッフがどんな思いで虎次郎くんの診察に臨んだのか?いぬの病院バウバウの獣医師・松本先生に聞いてみました。
以下が松本先生からの回答です。
松本 先生
虎次郎さんはあまり病院での診察が好きではない子で、そのようなわんちゃんを診察する際に私が気をつけていることをお伝えします。
1.とにかくお互い怪我をしないようにする
わんちゃんにとって病院での診察は、よく知らない人に嫌なことばかりされる場所という認識が普通です。
身を守るために噛んでくることは当たり前です。
なので私自身、そして保定者が噛まれないように、バウバウ病院ではカラーをしたり,犬をよく知るトレーナーが保定に入るなどして、犬に負担をかけないやりかたでお互いに怪我をしないような検査や処置をしています。
2.処置台にいる時間を短くする
これからする処置の準備を完璧にしてから台の上にあげます。
たとえば採血する予定なら、注射やアルコール綿など全て用意してから台の上にあげます。
台の上が基本的に1番緊張する場所なので。
3.我慢の限界を見極める
わんちゃんによって我慢の限界は様々です。
鳴き方や動き方をみて、もう限界かと思ったら処置を中断する場合もあります。
状態によっては検査や処置を優先すべきときもありますが、後日でいい場合などは、一旦中断し、無理に全てやらないようにしています。
4.声かけとごほうび!
処置や検査が終わればしっかり褒めてご褒美のおやつをあげるようにしています。
すこしでも嫌な気持ちがなくなればいいなと思って実施しています。
〇両者をつなぐ架け橋としてトレーナーは何が出来るのか
虎次郎くんの気持ちも理解できるし、松本先生が負担を減らすためにできる限りのことしてくれてることも分かりました。そんな診察の中でドッグトレーナーはどんなことができるのか、考えてみるとたくさんの方法がみつかりました。
お顔周り、足先、お尻など身体を触る練習、エリザベスカラーを装着する練習、
病院、診察室、獣医さんなど環境に慣れる練習が必要だと感じました。
また、飼い主様のいない、緊張する場面で少しでも安心してもらえるような日頃からの関係作りも必要だと感じました。
病院でのお預かり中に診察室が空いていれば診察室でおやつタイムをしたり、獣医さんに撫でてもらったり、バウバウでは一般の病院ではできない体験や慣らす練習などができるので積極的に取り組んであげることも必要だと感じました。
なにより、定期健診以外の診察をしなくても良いように健康を維持してあげることが大切だと思います。
バウバウ幼稚園に通っている子も病院が苦手な子がほとんどです。
私たちは登園してくれているわんちゃん達の病院への印象を少しでも変えるために、トレーニングや慣れさせる練習などを日々行っています。
先日も、病院の中をお散歩しました!
『登りたい!』と言うふうに診察台に手を掛けてくれたので乗せてみました。少し緊張気味のお顔ですね。
″診察台に乗ったけど嫌な事は何もされなかった″と言う経験をする事ができました。
練習を重ねて嫌な印象を減らし、更に良い印象に変えて虎次郎くんの苦手な診察も楽しいものに変えてあげたいです。
〇バウバウ以外の飼い主様でも出来ること
病院には診察以外にもホテルの利用、トリミングや爪切りなどのお手入れ、レッスンなどで行くこともあると思います。
人が大好きな子であれば獣医さんや看護師さんにたくさん撫でてもらったり、おやつが好きな子であれば苦手な状況の時におやつをたくさん与えたり獣医さんにもらったりなど、愛犬が好きなことを病院でたくさん経験させてあげると良いと思います。
苦手度が高いほど、おやつはおいしいものに、楽しみは大きくしてあげると不安な気持ちが和らぎます。
わんちゃん同士の交流が好きな子は普段からホテルを利用するようにしておくと「病院=お友達に会える場所』という風に病院が楽しみになるかもしれませんね。
パピーであれば物事を理解するようになる前から病院で好きなことを繰り返すことで自然と楽しい場所となります。ワクチンなどで怖い思いをする際は、頑張ったご褒美にたくさん褒めてげてフォローをしてあげてください。
バウバウ病院ではパピーレッスンやマンツーマンレッスンなども行っており、苦手なことに対する克服方法のアドバイスなどをさせていただく事も可能です。その子に合った練習方法を一緒に探しましょう。
〇犬の幸せとは
私たちが考える犬の幸せは、まず第一に健康であることです。
健康であるためには定期検診が必要となりますが、診察はわんちゃんにとって試練でもあります。
病院への印象は病院で何を経験するかによって決まります。病院へ行く目的は診察なので診察の意味がわからないわんちゃんにとって病院=嫌な場所になっている子がほとんどです。
その印象を良い印象に変えてあげましょう。
試練が良い印象になれば、わんちゃんへの負担は減り、気になる事があった時に飼い主様もわんちゃんを連れて病院へかかりやすくなります。
病院が好きになれば病院へ行ってもウキウキするし、病院へ行く事がひとつの幸せとなります。
病院へ行く事で幸せに、健康になれるなんてとっても嬉しいですね!
トレーナー 山下 円果
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