皮膚糸状菌症~カビが原因となる犬の皮膚病~
みなさん、わんちゃんの皮膚病で 真菌(カビ)が原因の病気 があることをご存知でしょうか。
今回はそんな真菌が原因となる皮膚病の中で、皮膚糸状菌症についてお話ししたいと思います。
皮膚糸状菌症はわんちゃんにもねこちゃんにも発症する真菌が原因の病気です。
特に免疫の弱い子犬・子猫、高齢の犬猫に見られることが多い病気です。
皮膚糸状菌は感染力も強いので、特にペットショップなどで集団感染してしまう危険性があります。
またこの病気は人にも感染するので、わんちゃんからご家族にうつってしまい、皮膚病を引き起こす場合があります。
症状
主な症状は毛が抜ける、皮膚が赤くなる、フケが出てくるなどで、感染が広がるとかさぶたの様なものが見られることがあります。
痒みの程度は様々で、ちょっと痒いかな~ぐらいの場合が多いです。
わんちゃんの顔に見られた脱毛箇所です。
皮膚も赤くなり、フケも沢山見られました。
診断方法
真菌培養検査を行ったところ、下の写真のように培地の色が変化しました。
これにより、皮膚糸状菌症を診断することができます。
↑ 検査前の培地の色(黄色~オレンジ色)
↑ 培養をスタートしてから1週間後の培地。
皮膚糸状菌により培地の色が赤色に変化しました。
培地の中心部にある白い部分がありますが、これはコロニーと呼ばれるもので、菌が多数繁殖している部分です。
ここをちょこっと採取して、顕微鏡で菌を見てみると….
上記のような皮膚糸状菌が観察されました。
治療方法
皮膚糸状菌の治療法は主に4つあります。
①毛刈り
糸状菌はわんちゃんねこちゃん達の毛に感染します。
ですので、ここを取り除いてあげる事でより感染部位が広がるのを食い止めます。
②薬物療法
感染部分が皮膚の限られた部分の場合、カビをやっつける薬の入った外用薬を塗ってもらいます。
感染部分が全身に見られる場合は内服薬を飲んで貰います。
痒みが酷い場合は痒み止めも飲んで貰う場合があります。
③シャンプー
カビをやっつける薬の入ったシャンプーを使い、週1~2回シャンプーを行います。
この時に毛がなるべく飛び散らないようにしてもらいます。
シャンプーが高頻度になるので、皮膚が乾燥してしまう場合は保湿剤も併用します。
④環境改善
先ほども述べたように、糸状菌は感染力が強いのです。
基本的に感染してしまった場合は隔離をしてもらいます。特に同居の動物がいる場合は接触させないようにしてもらいます。
人も感染する可能性があるので、ご家族にもできるだけ触れる機会を減らしたり、手袋などを使ってもらって、感染を防いでもらいます。
もしご家族にも症状が見られた場合は皮膚科の受診が必要となります。
人に感染した場合は、上の写真のようなリングワームと呼ばれる特徴的な見た目の皮膚が見られます。
生活環境の改善も必要で掃除はとても大切です。
こまめに掃除機をかけ、週に1回ほど薬局で売っている次亜塩素酸を利用して、クレートや接触した箇所を消毒してもらいます。
このように、皮膚糸状菌の治療はご家族の協力が必要になってくる病気です。
もちろん、全てを実施することは難しい場合がありますので、出来る限りの治療をご家族と相談しながら決めていきます。
先ほどの写真のわんちゃんは、顔の一部のみ症状が見られたので、外用薬を毎日塗ってもらい、、ご自宅でシャンプー(商品名:マラセブ)をお願いし、同居のねこちゃんもいたので接触させないようにしてもらいました。
治療開始から20日後の皮膚、フケもなくなりかさぶたが一部見られるだけになりました。
その後治療開始から37日後、再度真菌培養検査で陰性だったので、治療終了となりました。
初日から3ヶ月後には毛も生えてきました。
皮膚病があったとは思えないほど綺麗です。
皮膚糸状菌症はとても厄介な皮膚病です。
特にペットショップから迎えて間もない時期に皮膚病が見られましたら、早めに診察を受けて頂くことをお勧めします。
獣医師 松本